- 2016-3-7
- コラム
記事提供元:心と体のストレスケアマガジンWASA-V
21歳から12年間にわたり、選手として総合格闘技やブラジリアン柔術、キックボクシングなどの試合に出場。並行してフィットネスクラブでのトレーナー経験を積み、フリーインストラクターに。現在はピラティスやプライベートレッスンを中心としながら、キックボクシングエクササイズや企業フィットネスなどの指導者としても活躍。
女性らしいピラティスとアクティブな格闘技。一方、趣味は多肉植物に少女漫画にプロレス観戦、銭湯と、その二面どころではない多面性が実にユニークな人。そんな彼女からいったいどのような<声>が聞き出せるのか―。取材前からワクワク感が募る。
<きっかけ>を生かす人・逃す人~この世の沙汰は自分次第
取材当日ベリーショート姿で現れた葛西さん。聞けば、長年ロングヘアだったのをつい最近切ったのだとか。鏡を見ていてある日突然「似合ってない」と感じて即行動、惜しげもなくバッサリ切った。すると、見た目も心も実にスッキリ。今の自分によく似合っていて、自然と人前に立つことにも自信が生まれたそう。
髪を切る、たったそれだけのことでも日常にいろんな変化が生まれる。服装も変われば、気持ちも明るくなり、日々が楽しくなる。そうした些細な何らかの<きっかけ>の積み重ねが自分を後押ししてくれるものですよ、と実にさわやかな笑顔で話してくれた。
そんなスマイルデフォルトな葛西さんだが、高校一年のとき、入ったバレーボール部内でいじめに遭い、心底打ちのめされたことも。スポーツは大好きだったが、受けた心痛で体を動かす気力をまるで失った。さらに積もるストレスは食欲を増進させ、体重も大幅増。気持ちはますます落ち込んでいった。いまの彼女からは想像がつかない負のスパイラル。そんな悪循環から抜け出す<きっかけ>が総合格闘技だったという。
昔からプロレスを見るのが好きだったところに、当時絶大な人気を誇った総合格闘技「PRIDE」にはまった。しかしはまったとはいえ格闘技はあくまでも「見て楽しむもの」であり、決して女子プロレスラーに憧れていたわけでもない。なぜならコスチュームが可愛すぎるし、下宿生活というのもちょっと…というこれまたユニークな理由なのだが、とにかく格闘家を目指していたわけではなかった。しかし何という偶然か、近所に総合格闘技の道場ができるという。しかも、ダイエットに効く!との売り文句。高校以来、すっかり太った自身の姿を見れば、やせねばならないことは明白だった。<きっかけ>サインが点滅。一大決心し、総合格闘技道場の門を叩くに至ったのである。
いや、正確には「門をくぐったものの、初回は扉を叩く勇気が出ず、そそくさと帰ってきた」そう。テレビで見ていた総合格闘技は間近で見ると実にすさまじく、人が倒れる音も尋常ではない迫力だった。そのうえ100人近くいた道場生は9割9分が男性。さすがの葛西さんも物怖じした。しかしそこは<きっかけ>を逃さぬ人、「やってダメだったら辞めればいい」と気を取り直して数日後に再訪。勇気を振りしぼって門戸を叩き、かくして道場は<紅二点>となった。
楽しい・飽きない・続けられる・健康~ポジティブループをつくろう!
すると初日の躊躇はどこへやら、気付けば男性相手にビシバシ打ち込むなど本格的な格闘技の道を突き進み、そのまま14年間ひたすら鍛錬。生来<飽きっぽい>性格らしく、高校時代の部活動はともかく短大さえも「しっくりこない」という理由からわずか一年で辞めてしまったほど。それが総合格闘技だけは長く続いて・・と自分でも驚いたとか。さて、いままでとは何が違ったのか?
答えは簡単、<楽しかった>から。女子高の、女子ばかりの部活で陰湿ないじめに遭った苦い経験から一転、男性だらけのさばさばした空間はとても居心地が良かった。トレーニングは厳しかったが、持ち前の負けず嫌いな性格も手伝ってめきめきと上達していくその手ごたえがまた楽しい。一層やる気が出て、トレーニングに励む。やればやるほど自然と体も引き締まってくる。辞める理由がなかった。
楽しいから続けられる。当たり前のことだが、なかなかその流れに乗れない人も多いのでは?日々の仕事や育児などに追われ、自分の楽しみや趣味の活動なんて二の次三の次というのが現実ではないだろうか。
しかし・・と葛西さんは警鐘を鳴らす。「企業フィットネスで訪問した先で、月に一回ゴルフの打ちっぱなしでリフレッシュしているとか、年に一度は温泉旅行で癒して‥といった話を聞くのですが、そんな長期間スパンの気分転換では集積したストレスを軽減することはできません。また、ストレス発散には思いきり体を動かすことが有効なのですが、月に一度体を軽く動かす程度では、気持ちはリセットできても、日ごろの運動不足で固まっている体にはただ疲労が残るばかりなのです」と。気持ちだけではなく、体のリフレッシュがストレスケアには重要なのだ。
さらには、「本来、一番体力に恵まれているはずの30代男性に、まるで筋力や体力がない人が多いことには驚かされる」とも。「ちょっとしたエクササイズを始めると、ほんの数分でバテてしまう。フィットネスクラブに通う70~80代のおじいちゃんたちの方がスタミナありますよ」と笑う。若年層には<昔取った杵柄>の記憶がまだ新しく、社会人になったいまでも自分はまだまだいけると信じている人が多い。その過信こそが仇になる。家でも仕事のことが頭から離れず、知らぬ間に蓄積していくストレス。食生活の乱れに、極度の運動不足。心身とも、想像以上に<不健康>な状態で、本人が気付かないうちに体力や筋力は衰えていく一方なのだ。体重計は身近なものだし日々増減をチェックできるが、自分の筋肉量までは把握できず、筋力の衰えや筋肉量減少の自覚がないこともその一因なのだろう。
そういうと「わかってはいるけど、忙しくて運動する暇がないだけ」とうらみがましい声が聞こえてきそうだが、それは都合の良い<言い訳>にほかならない。「わかっているなら、とにかく何か始めましょう」なのである。
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