Can you hear you?~体の声が聞こえていますか?~ 池治 ちあきさん

記事提供元:心と体のストレスケアマガジンWASA-V

「究極」という名がついたスポーツ競技<アルティメット>をご存じだろうか?直径27センチ、重さ175グラムの、白いプラスチック製の円盤型フライングディスクを投げ合う、アメリカンフットボールとバスケットボールを足したようなチームスポーツ。実際、投げ方次第でディスクを変幻自在に飛ばす巧み技や、最大100分間走り続ける持久力など<際立った>要素は多いのだが、何よりも審判がいない「セルフジャッジ(自己審判制)」を採用し、「スピリット・オブ・ザ・ゲーム」という“反則をしない前提”に則る競技だということにその類まれな究極性を感じる。

そんな競技の第一線で活躍されているのが、池治ちあきさん。日本代表選手としての高い技術やスピード、恵まれた体力はいうまでもなく、全身からあふれ出る爽やかなスポーツマンシップと周囲を魅了するキュートなその笑顔は、まさに<アルティメット=最高>。
さて、それではこちらも正々堂々インタビューに臨むとしますか。

◇ストレスをためるもなくすも自分次第

アルティメットを含むフライングディスク競技についてもう少し説明しておくと、全世界における愛好者人口は約6000万人、競技者人口は700万人に達するという。日本でも愛好者は約150万人に達し、いまや150校を超える中学・高校・大学などの授業や、さまざまな生涯スポーツ講習会に採用されるなど、日本国内での競技人口も年々増加傾向にある(一般社団法人 日本フライングディスク協会サイト記載)、らしい。

そう、つい「らしい」と書いてしまうほど、筆者のような昭和世代にとってはほかのマイナースポーツ同様、圧倒的になじみがない競技なのである。しかし驚いたのは、日本はフライングディスクの強豪国であり、アルティメット競技では1992年以降、多くの国際大会で日本代表チームはメダル圏内にいて、世界一になったことも少なくない。‥にもかかわらず、である。

それだけメディアなどで露出されていないということで、スポンサーも望めず、やはりマイナー競技ならではの「遠征費用実費」「強化費ゼロ」という厳しい環境に置かれている。日本代表チームでさえユニフォームをはじめ、合宿や遠征などにかかる費用一切を選手が自分たちで工面しなければならないのだ。実際池治さんは、日本代表に選ばれながら海外への遠征費用が捻出できず、試合に出られないという悔しい経験をしている。ちなみに、何とか工面して無事出場し、見事優勝したとしても賞金は出ないそうだ。満足な支援もごほうびもゼロ。それはさぞかし不満やストレスが・・とついゲスな勘ぐりをしてしまう。

しかし答えはきっぱり「ノー」。自分の好きなことをやらせてもらっているので、実際いろんな困難はありますが自分は恵まれていると思います、とさわやかな笑顔が返ってきた。彼女はアルティメットの選手として活動できるよう、普段は都内の高校で講師として勤めている。同様に、アルティメット選手の大半が平日は別で仕事をしながら、土日にアルティメットという<兼業>生活を続けている。二足のわらじというよりは、競技シューズを履くために平日をわらじで過ごしているとでも言うべきか。

それでも、仕事とアルティメットの両立で休みが取れなくても、アルティメットがあるからこそ仕事もがんばることができる。スポンサー無しの厳しい現状も、やりたいことをやっているのだからそれで当たり前だと思えば腹も立たない。むしろ職場に理解があり、万一平日にアルティメットの大会予定が入ってもできるかぎり現場を調整し、快く送り出してくれる環境には正直感謝しかない。そうして見守ってくれるすべての人たちに恩返しをしたいという気持ちこそが日々の原動力につながっているし、できる最善を尽くすよう努めるだけだという。

そこではたと気づく。何事も自分の見方や捉え方次第なのだと。多少精神論にはなってしまうが、ストレスを感じるかどうか、ストレスをためこんでしまうかどうかは自身の身の持ち方ひとつで変えられるものなのだ、と。人間は社会環境の中で生きていて、その環境下で<受け入れられないこと>があるとストレスになる。そしてそれらを回避・排除しようとしてできなかった場合、また新たなストレスとなって加重していく。さらにはそんな状況にある自分を<不幸>だと感じる。自作自演の、ありがちな負のスパイラルである。

でもだからこそ、逆もあり得る。自分で作ったストレスなら、自身が少しものの考え方を変えればすべては好転していくはず。「ストレス発散」に悩む前に、ストレスの根源から断ち切る術を池治さんの姿に学びたいものだ。<体の声>もきっと明るくワントーン上がるに違いない。

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